
米国では、加工食品に総脂肪量、飽和脂肪酸量、コレステロール量、トランス脂肪酸含有量を表示しうなければなりません。これらが冠状動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)の危険因子となるからです。
ニューヨーク市では全米のトランス脂肪酸量表示義務より一歩踏み込み、外食産業でのトランス脂肪酸使用禁止を打ち出し、これを施行しました。
デンマークでは製造・加工過程で生じたトランス脂肪酸については、消費者向けに販売される最終製品に含まれる油脂100gあたり2g未満とする制限が設けられています。
このように欧米でのトランス脂肪酸が進む中、日本ではどうなのでしょうか? 今回のニューヨーク市の対応に対する厚生労働省のコメントです。
「バランスよく食事をするかどうかの問題。今のところ、商品にトランス脂肪酸の成分表示をしたり、外食産業に使用規制をしたりすることはない。ニューヨーク市の行動力は素晴らしいが、すぐに日本に当てはまるとは考えていない」とそっけないものです。
食品安全委員会の調査を受けて、農林水産省のトランス脂肪酸に対するコメント要旨は次の通りです(農水省HP・トランス脂肪酸に関する情報より)。
・健康を保つためには、食品から栄養をバランス良く取ることが最重要
・油脂は重要な栄養成分だが、過剰に摂ると肥満や心臓疾患などのリスクを高める
・脂肪のとりすぎをやめ、動物、植物、魚由来の脂肪をバランスよく摂ることが重要
・飽和脂肪酸の摂り過ぎに注意
・一部の国や都市では加工食品の栄養表示項目にトランス脂肪酸を追加することや、油脂中のトランス脂肪酸の含有量を一定以下にするための取組みが行われている
トランス脂肪酸はLDLを増加させるだけでなく、HDLを減少させる最悪の作用をします。肝臓からコレステロールを全身に運ぶキャリアがLDL、余ったコレステロールを回収して肝臓に戻すキャリアがHDLです。LDLとHDLのバランスが問題なのであって、トランス脂肪酸はそのバランスを悪化させるリスキーな脂肪です。
厚生労働省の見解は、食品安全委員会の答申を受け、日本人のトランス脂肪酸摂取が1日 1.56g以下と欧米に比べて少ない(米国 5.8g、欧州諸国 1.2〜6.7g、オーストラリア 1.4g)ので、表示も規制も必要ないとしています。
確かに欧米人は肉食をし、肥満した人も多いですが、日本人の食生活の洋風化は相当に進んでおり、トランス脂肪酸の摂取が危険水域を超えている方が相当数いるものと思われます。本当に規制の必要はないのでしょうか?