
トランス脂肪酸問題ではマーガリンが象徴的に扱われています。マーガリンが水素添加という工法で作られ、その過程でトランス脂肪酸が生成されることも徐々に知られるようになってきました。
では、トランス脂肪酸は水素添加でつくられるマーガリンやショートニングなど、ごく限られた油脂だけの問題なのでしょうか? いいえ、トランス脂肪酸が生成されるプロセスは他にもいくつかあり、あなたの台所でもトランス脂肪酸は生成されている恐れがあります。
トランス脂肪酸の生成については、次の4つのプロセスがあります。
【天然に生成されるプロセス】
1.自然界において、牛などの反芻(はんすう)動物の胃の内部でバクテリアの働きにより生成され、乳や肉などに少量含まれる
【人工的に生成されるプロセス】
2.植物油等に水素添加する過程において、シス型の不飽和脂肪酸の一部が変性
3.植物油等の精製工程での脱臭過程において、シス型の不飽和脂肪酸の一部が変性
4.油を高温で加熱する過程において、シス型の不飽和脂肪酸の一部が変性
牛乳や牛肉にはトランス脂肪酸が含まれており、過食にはリスクがあることを認識しておいてください。その量は牛肉100gあたり 0.52g、牛乳100gあたり 0.09gです。(「トランス脂肪酸を含む食品」参照)
マーガリンがこの工程でつくられる代表ですが、原料となる植物油にを使用目的にあった物性(融点をあげる、酸化しにくくするなど)を与えるために広く利用されています。
水素添加でなぜ物性が変えられるかなど、詳しくは「水素添加という工法」を参照ください。
水素添加を行った油は「硬化油」と呼ばれ、水素添加の程度によって、獣脂に近い物性を持つ固形油や、リノール酸やリノレン酸が少なく酸化による品質の劣化が起こりにくい液状油を製造することができます。私たちは知らないうちにこの「硬化油」で加工された食品を口にしている可能性が大いにあります。
植物油等の脱臭は、原料油脂のニオイを除去するために行われます。
例えば、外食産業や加工食品の工程では、安価なパーム油(ヤシ油)が広く利用されています。例えばインスタントラーメンの揚げ油、ファーストフードのフライドポテトなどにも利用されているのです。
このパーム油、オレンジ色をした常温で固体の油脂で、独特の芳香と甘味を持ちます。家庭ではなじみのない油脂ですね。植物油では珍しく常温で固体ですが、これは飽和脂肪酸を大量に含むためで、牛脂に近い組成をしています。
このパーム油のように臭いの強い油脂は、脱臭というプロセスが加えられます。さまざまな方法があるようですが、高温、高真空下で水蒸気を吹き込み、臭い成分を除去します。この脱臭過程でトランス脂肪酸が生成されるのです。
油を高温で加熱する調理過程において、トランス脂肪酸が生成するといわれています。ただ、この点に関してはあまり研究が進んでおらず、どの程度トランス脂肪酸が生成するかについての知見は少ないのが現状です。
自衛策としては、家庭での揚げ油は毎回使い切ってしまうこと、外食では油を使った料理を極力避けること、だと思います。